読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

recollection’s blog

書籍、漫画、アニメ、評論、映画、その他コンテンツの感想、評論、あらすじ、要点纏めを書いていきます。ネタバレもあるので注意

さよならアリアドネ/宮路昌幸//中年男性は、いかにして中年女性と出会い、向き合うべきか。

小説 書籍

スポンサードリンク

さよならアリアドネ (ハヤカワ文庫JA)

さよならアリアドネ (ハヤカワ文庫JA)

  • ザムドの監督、宮路昌幸さんの本。
  • ザムド的なものを期待すると裏切られる。
  • 中年男性のアニメーター(既婚)服部政志が、主人公
  • 妻が1週間休暇で外国に行っている間の独り身の間に起こる出来事
  • 40年後の未来からやってきた、アリアドネ邦子となのる中年女性が、「あなたは将来不幸になります。不幸になりますが、人生の最後に公開するかどうかは生き方次第です。失敗しますが、それに対してどう受け取るかということが大事なので、15年後の未来のある一日にいって、予習してきてください。失敗しても大丈夫、残機は72回あります。その中で、これでよかったと思えるような一日を過ごしてください」と言われる。


というような冒頭で始まる話。

  • 話は大きく2部に分かれていて、主人公の服部政志が繰り返される15年後の、干されアニメーターとしての人生をやり直す中で大切なことに気づく話。
  • そして、そのあと、アリアドネ邦子をめぐる話。未来の上司の芥川さんと、彼女自身の8年前、死んでしまった恋人をめぐる話。
  • 筋立て自身は、そんなに物珍しいものではない。タイムリープものだし、タイムスリップもの。細かい道具だての組み合わせが物珍しい。
  • 主人公がアニメーターで、世界の認識が、アニメのカット割り、動画の作り方、としてとらえられてるのが面白い。世界の見方が違う。
  • タイムリープのシーン。普通、表現するのなら一日終わり、次の日、その次の日、となるのだけれども、時系列で何日分も語られる。
  • アニメのカット割り的な世界のとらえ方。大きな脚本とシナリオ、カットカットは決まっていて、それは動かすことができない。ただ、その中の一枚一枚の動画をどう動かすかによって、アニメの見え方や意味や面白さが変わってくる。
  • アニメのワンカットの中に瞬間的に紛れた表情、動き、所作、そういうものがアニメの出来を決める、という“服部政志”(そして宮路監督の)世界観が表れているのだと思う。
  • 服部政志とアリアドネ邦子との友情なんだか恋愛(ちょっとした不倫的な?)なんだかそういうわからない関係
  • 村上春樹の小説だったらすでにセックスしている
  • 表現のキモが、アニメ的な世界の認識、なら、物語のキモは「中年男性は、いかにして中年女性と出会い、向き合うべきか。」

中年男性は、いかにして中年女性と出会い、付き合うべきか。

  • ボーイミールガール。
  • 恋愛ではない、人間同士の出会い。男女。あんまり見ない気がする。人と人が出会う話は、たくさんあるし、そういう話ばかりだけれども、大人同士が出会う場合って、仕事とか役職。その人としてのストックキャラクター(殺人鬼であったりサイコパスであったり)としての出会いの話が多くて、または、その人が持つ内面をほじくることであったり、とりあえず、出会いは必然で意味があり、意味があるから、付き合い方にも必然がある。
  • 何でもない人間が、何でもなく出会い。お互いの内面に干渉せずに、とりあえず一緒に行動する。難しい。なんかこれってすごい難しいことだと思う。とくに中年になってからは。
  • 高校生とか、大学生とか、小学生とか、中学生とか。そういう枠がある場合、お互い若くて、世界や他人への興味によって世界ができている場合、そんなに深くない男女が行動をともにする、というのは、そんなに難しくない。
  • 中年になると世界が閉じるし、自分の持っているパーツでなんとかしようとする。他人に対して、今まで自分の培ってきたテンプレートで判断しようとするし、解釈しようとする。
  • だけれども、男の人にとって、女の人はいつまでたっても、未知で恐ろしい存在だ。
  • たとえ中年男性になって、相手が中年女性であっても。


女性、女の人の中にある、得体のしれない何かの得体

  • もう、30年以上生きてると、女の人のなかに得体の知れないものがあるのをわかってるし、それが何なのか、ブラックボックスとしてだいたいわかってる。それでも、そこに踏み込もうとすると、やっぱり訳がわかんない。
  • 奇麗でない、普通の人生を、どうやって。幸福に、するの?
  • 大きな筋や流れというものは変えられない。自分の隣り合う世界の脚本は別の結末があるかもしれないけれども、それは別の人生だ。
  • ひとコマひとコマ、丁寧に書いていくしかない。


あと、ちょっとおもしろかったところ

  • 主人公の服部政志がダメになった理由というのが、あるとき作った作品が、芸術的な賞をとって、それから芸術家気どり、芸術畑みたいになってしまってダメになったらしい。
  • あと、15年後の世界、2025年は、某巨匠はもう亡くなっているらしいけれども、こちら側の世界線では引退宣言を撤回したし、2025年にもまだ生きていそう。