recollection’s blog

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閉鎖病棟/「無事」という言葉を選んだセレクトが本当に素晴らしい。細かい言葉の選択や感情の紡ぎ方がすごい。

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閉鎖病棟 (新潮文庫)

閉鎖病棟 (新潮文庫)

いい出来だった、面白かった。

一言で身も蓋もなくいってしまうと、30年精神病院にいた50代の中年のネガティブハッピーチェーンソーエッジなんですが、(話の骨格が)ネガチェンよりもやっぱりかなり面白かった。

不幸な妊娠をした14歳の少女を15年刑務所にして20年精神病院にいた患者と30年精神病院にいた患者の二人が命をかけて助ける話。一言でいうとそうなるんですが(そして少女があまりに理想化されて書かれてる所が僕が精神病棟版ネガチェンといった由来ですが)30年近く閉鎖空間にいた人間が、どうやって、外の世界で生きていこうと思うようになるのか、そして、何もない自分自身をしょって生きていこうと思うのか、その部分がすごく丁寧に書かれていて、本当に、よかった。

ちゃんと精神病の人間が戦後からどんな扱いをされていたのかも物語に触れて描かれているし、頭のおかしい人のそれでもあまりに人間的な葛藤が描かれていてよかった。秀丸さんがチュウさんに贈る花瓶に描かれた「無事」のふた文字。この文字を選ぶセンスが素晴らしい。なんていうか全体に漂うほのかで静かな絶望と、しかし、それでも生きてくことに決めるという力強い命の力。それを感じられる作品だった。これはもっと評価されてもいいよーー。本当に面白い。

途中で挿入される、入院患者の演じるお芝居があるんですが、そういう物語の小道具の使い方もうまい。

読んでよかったと思いました。